はこがい。

ハリボー大人買いしたい。

おふとん抜け殻危機

気付けば交際7年目に突入していた。

山手線のはるか外側、築26年25平米1K月6万円の一室から始まった私たちは、相変わらず山手線のはるか外側だけれども、築23年42平米1LDK月10万円と以前より少々ランクアップした部屋で暮らしている。彼よりも年収が低いのが許せなくて仕事に邁進していた私の年収は7年で1.5倍ぐらいになったし(彼の年収も上がっているので抜かせてはいない)、貯金も増えた。けれど世にいうパワーカップルの端くれを標榜することにはいまだ抵抗がある。

出会った時と比べて、私の体重は8kg、彼の体重は5kg増えた。私の身長は1.5cm伸びた。彼の身長の変化については情報がない。

付き合い始めた頃、誕生日とクリスマスにはプレゼントを送り合っていたが、いつのまにか「ちょっといいディナー」を食べに行くことで完結するようになった。でもバレンタインとホワイトデーにはいまだに必ずお菓子を用意している。

出張や帰省で遠くに行くと、彼は必ずお土産を買ってくる。諸事情で手ぶら帰宅となるときは、必ず謝罪のLINEが入る。かくいう私はお土産を買い忘れる常習犯である。というか、お土産を買わなければという意識がない。というか、そもそもお土産を買うレベルの遠出をしない。

 

変わったことは多いが、変わらないことも多い。

 

一緒に暮らし始めたときから、彼が起きたあとの寝床の汚さに辟易していた。今も日々辟易しているし、ついさっきも辟易していたところだ。

あまりの汚さに耐えかねて一度クレームを申し立てたところ、先方は大変不機嫌そうな顔をされた。以来私は、どうにかして波風立てずに寝床を分けられないかとか、別れた方がいいのかな、いやいやそれほどまでじゃないなとか、いっそ私に地方配属の辞令がおりないかなとか、色んな妄想を繰り広げながら住宅情報サイトを回遊するようになった。

 

ここまでかなり悪様に書いてきたが、ここでいう「寝床の汚さ」は「よごれ」の意味ではない。臭いとか、布団以外のものが散らかっているとかでもない。

掛け布団が、ありえない捩れ方で、ぐちゃぐちゃになっている。ただそれだけである。

 

私自身、起床後のベッドメイクをするタイプではない。実家にいた頃は父からよく小言をもらっていた。そんな私がイライラし続けたのはなぜか。

結論、「夜、私がスムーズに布団に入れない」のが理由である。

 

我が家のベッドは壁側に寄っている。

早く起きる私が部屋側、遅い彼が壁側がそれぞれの定位置だ。朝起きるとき、私は布団の部屋側・頭側の角を1/4ほどはねて寝床を抜ける。一方彼は、なぜか、壁側の一辺を盛大に(しかも頭側を思いっきり)はねて立ち上がる。個人的にはなぜベッドの上で立ち上がるのが理解が及ばないが、結果、布団の上半分だけが捩れて半回転するに至っていた。

我が家のふたりはいずれもベッドメイクの習慣がないので、どちらかといえば早く就寝することが多い私が寝室に行くと、捻れて捩れてそのままの哀れなお布団がベッドの上で倒れているのである。

そんなとき、終電続きで疲労のお化けに取り憑かれた私は妙な徒労感と焦燥感と煩悶感に苛まれる。なぜこんなに疲れていて1秒でも早く寝たいのに、肝心の寝床がnot readyなのか。可哀想なお布団、お前をこんなふうにしたのは誰。反対側に行ってしまった端っこを引っ張り出してむんずとつかみ、舞い立つ埃を尻目に大きく振りあげ掛け直す。

私は、このワンクッションが必要になることに、どうしようもなく辟易していたのである。

 

それに気付いて、ホッとした自分がいる。寝る前に布団を整える手間にフラストレーションを感じているのであれば、その手間がなくなるような仕組みを考えれば良い。仕組みを憎んで人を憎まず、である。